【ロジカル・マジック Vol.3】-Easy come, easy go:『バイアス』という名の恐ろしい魔法-

こんにちは、MTG Digging編集部のNIMAMEです。

ちと最近、MTG界隈で気になった出来事があったので、今回はそれについて書いていこうかなー、と思います。

先に断りを入れておきますが、これは決して当事者に当たる方々に茶々を入れたいわけではなく、何故そのような結果になってしまったのかに焦点を当てた内容となっておりますのであしからず。

では、早速本題のほうに移っていきましょう!

情報の取捨

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今回メインテーマとするところは、ズバリ『情報の取捨』についてです。

雑誌やコミュニティから情報を収集していた時代とは大きく変わり、現在は集めきれないほどの情報が溢れている時代です。

基本的には情報の収集方法・範囲がフラットになっており、(情報について)他のプレーヤーと差をつけるのは、【より鮮度のある情報・より正しい情報・よりクローズな情報】と考える事が出来るでしょう。

突如、無名だったプレーヤーが大舞台での脚光を浴びることが多くなったのにも、こういった背景が非常に大きく関わっています。

週末に勝ち組となったデッキは、翌週には既に対策されつくして勝てなくなっている。MTGアリーナに至っては、日々メタゲームが目まぐるしく変わる、正に“大情報時代”へと突入しているのです。

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この時代、僕は好きだったなあ・・・

さて、そんな中わたしが非常~~~~に!!気になったのが、とある有料記事がMTG界隈で結構な話題になったことなんですよ。

一時期、『note』の文化がこの界隈でも盛り上がりを見せていたのをご存知でしょうか?プロの方から一般の方まで、数多くの有料記事が巷には出回っておりました。

その内容に関してはほとんど同じ形であり、「-ほにゃらら-の大会で良い成績を収めたデッキの過程と解説」ってのが王道の売り文句。ある程度の説明の後、この先のデッキガイドやTipsなどについて知りたければ記事を購入して読んでね。ってのがテンプレートでした。

このスタイルの売り方をすると、売り手と買い手の位置関係というのは割りとフラット寄りになりまして。見えているもの、そしてそれによって価値がある程度判断できるものに対して、「買いますか?止めておきますか?」ってことで双方が納得した関係を結べるようになるんですね。

例えば、高橋選手のこの記事。「青白奇跡の記事ですよ。大会で結果を出すまでの過程ですよ。サイドガイドとTipsも載っけてますよ。」と明瞭な情報を提供しており、この情報が欲しい!となった買い手が、納得して対価を支払う方式が成り立っています。

しかし、もしこれが大会の前に販売されて、「凄いデッキ出来ました!誰も見たことないものですよ!環境の最適解!」って幕を張った売り方をされていたらどう思います?

急に、Twitterに出てくる怪しい広告サイトみたいな匂いがしてきますよね?

今回このテーマで記事を書くことにした理由が、正に最近、これに類似した情報が売りに出され、不思議と広まっていったところにあるんです。

判断能力の混乱と『ハロー効果』

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まずは、その背景について見ていきましょう。

スタンダードは現在、皆さんもご存知の通り“大オーコ環境”。右を見ても左を見ても、オーコ、オーコとうんざりするばかり。終いにはメインボードから色対策カードが3~5枚ほど採用されるなど、マジック史に類を見ないほどの偏ったメタゲームが形成されています。しかし、過剰にメタったところで《夏の帳》、《世界を揺るがす者、ニッサ》、《意地悪な狼》、《ハイドロイド混成体》など、小技から大技まで隙がないデッキパワーに蹂躙される。おまけにプレイヤースキルにも強さが左右される事から、ただ真似をするだけではなかなか勝ちきれない。更には、《王冠泥棒、オーコ》自体が高価な上に、使うなら4枚必須!…と、多くのプレーヤーからのヘイトを集めるには、余りにも十分過ぎる要因が積み重なっておりました。

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嫌悪の塊

間近には、GP名古屋も迫っている。どうする?どうする?どうすればいい・・・?!

こんな状況になった時にたどりつくのが、藁なのか、木の枝なのか、はたまたレンガなのか?その全容が見えていなくても、この苦しみから逃れられるなら「藁にもすがろう」といった心境です。

ここまでくると、もう冷静な判断は出来ません。普段なら訝しんでブレーキが効く場面でも、自分の判断を正当化しようと、良く見えるポイントばかりに焦点を向けるようになっていくのです。

ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと『ハロー効果』というのですが、今回は正にこの魔法に大きくかかりやすい状況だったわけですね。

「他にない(オリジナル)、仮想的(オーコ)に強い、ネームバリュー(作者)、etc…」

こんな要因が並んでいれば、いくらでも正当化する理由を探すのは簡単です。おまけに今は、ご丁寧にSNSで簡単に体験談が収集できる時代。少しでも色気が出る言葉が目に付けば、飛びつくように購入へと至ってしまいます。さしづめ、「このデッキ使ってから5連勝!OOさんはやっぱりすげえ」とか、「プレイングは凄い難しいけど、マジで仮想敵に対して強い。買ってよかったー!」とかのコメントですかね。

冷静ならば、その連勝はどの状況(大会?ランクは?)で起きたのか、どういったところが仮想敵に対して強いのか?コメントの裏にある事実へと目を向けようとします。それが盲目的に良いところだけを切り取ってしまうようになるわけですから、本当に恐ろしい魔法です。

個人感の話をすると、マジックという結果に大きなブレが出やすいゲームにおいて、匂わせぶりな売り方をすることにはかなりのアレルギー反応を起こしてしまいます。結果を購入者の責任として委ねやすいんですよね(プレイング云々やら、事故が云々やら)。

平常ではいられなくなっている相手に対して、匂わせた言葉を渡す。
その効果自体は、実践者に委ねる。
母集団を形成して、一部だけは効果を実感する→成功談だけが大きく広まり、また人が集まる→延々とループ

誤解がないように言っておくと、『ハロー効果』自体は決してマイナスな面だけを持っているのではなく、例えば「試合前の所作を丁寧にすることで、こんなに丁寧な人はきっとコントロールやミッドレンジを使っているだろう」という印象を持たせたり、初対面の相手に無理にでも明るく振舞う事で、「この人は明るい人だな、きっと社交的で交友関係も広いんだろう」という印象操作に利用することが出来ます。ここら辺は結構役に立つ事も多いので、是非皆さんも意識して使ってみると良いでしょう。

結局、どう向き合っていけば良いのか?

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冒頭でもお伝えしたとおり、この記事では類の件を批判をしたいわけでも、売り方や購入された方に茶々をいれるつもりもありません。

ただ、普段なら冷静な判断が出来るのに、切羽詰った状況に追い込まれると予期せぬバイアス効果によって理性が歪んでしまうことがあるのをお伝えしたかっただけなのです。

今回に限らず、皆さんが普段プレイされている状況においても、この現象は頻繁に発生しています。

1ランドキープはしないと決意していたにも関わらず、「今日はツイているから大丈夫」「この間はこれで勝てた」などと、根拠が限りなく0に近い判断をしてしまったことはありませんか?

また、特定のカードに思い入れを強く持ちすぎたがためにデッキの選択・構築を大きく間違えてしまった経験はありませんか?

こういった過去の(偶然の)成功体験や、根拠のない(運)基準、妄信的に固執してしまったがための判断の裏にも、『バイアス』という名の恐ろしい魔法が存在しているのです。

これはどんなに上級者になろうが、人間である以上避けては通れない現象です。

この現象に対して我々が出来ることは、状況に面した時、「あ、いま自分は冷静な判断力を欠いているな。このままの感情に流されたら良い結果には繋がらないな」という自覚を持つことです。

“白か黒か”という極端な思考に陥った際は、必ずその中間地点“グレーゾーン”を探す癖を付けるようにしましょう。

今回の件で言うならば、冷静になって「大会結果を調べてどんなものか推測してみる→本当に結果が出ているのか?」、「SNS上に転がっている言葉の真相を探ってみる→BO1であったり、低いランク帯の結果じゃないのか?」などが考えられますね。

“大情報時代”となった現在、本当に有益な情報あれば嫌でも表に炙り出てくるものです。世界中のプロプレーヤーが連日のように配信をし、気になったカードやデッキがあれば直ぐにSNSで伝達される。

今回、GP名古屋で突如脚光を浴びた青白コントロールや青緑フラッシュも、アンテナを敏感に張っていれば数日前からその予兆が現れていることに気付けていたはずです(実際に、アリーナ上ではFoodに相性の良いこの二つのデッキを見かける機会が増え、青白コントロールに関してはWMCQでも抜群の成績を残していた)。

トップレベルのプロが毎日のように情報提供する時代ですぜ

まとめ

何かに身を任せ、思考停止をするのはもう止めましょう。

私が思うマジックの良さとは、その広大な思考の海にあると考えています。

学び、考え、実践する。

“大情報時代”となった現在だからこそ、今一度その価値について考えて欲しいものです。

私がプレーヤーとして尊敬する高橋選手が、Twitterでこんなことを呟いています。

是非、皆様も行動を持って確固たる自身を形成していってください。

 -さあ、流されてしまいがちだったこれまでとはサヨナラし、常に冷静な判断が出来る強靭な思考へと成長していきましょう!

(Written by NIMAME)

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